不思議不可思議

風に吹かれて西東

真田山陸軍墓地

2016年の秋に大阪へ行った。

行き先は難波で、宿泊地は上本町。仕事では馴染みのある地名だったが、実際に訪れたのは初めてのことだ。

当時は大河ドラマ真田丸」が放送中で(あまり詳しくは無かったが)、駅のあちこちに大きな看板やポスターがあった。調べてみると、その真田丸跡地はホテルから近い様子。朝食後、ふらりと外へ散歩に出た。

 

まず、真田山公園を目指して歩く。徒歩20分少々だろうか。坂道が多く、なかなかに歩きづらい。公園を横目に歩いていると、真田山小学校の西側の路地に迷い込んだ。

ふと、風が吹いて来た。

秋口とは言え、歩き通しで汗もかいていたので冷たい風が気持ち良かった。

暫く立ち止まり、風に吹かれるまま空を仰いでいると、どうにも不思議な気配を感じる。辺りを見回してみると、近くに楠の林が見えた。しかし、周囲は高い壁に囲まれており、どうやってそこへ行けば良いか分らない。

その時、ちょうど向こう側から犬の散歩をしている女性が通り掛かったので道を尋ねたところ、何と民家の敷地内を通る通路を案内してくれた。狭い木戸をくぐり抜けると、草地のある墓地に出た。

楠に抱かれるように立ち並ぶ、大きな石碑があった。

木々を吹き抜ける風がさわさわと耳の側を流れてゆく。

静まり返ったその場所は不思議な居心地で、ただ暫く目を閉じて何かに祈らずにはいられなかった。

 

帰宅後、どうにも忘れられずに色々と調べたところ、祖父が赴いた戦争で亡くなった方々を祀る場所だと分かり、あの不思議な気配は祖父の同僚や上官達では無いかと思うに至った。

数千の御霊を祀るあの場所が、これからも静かで平穏であることを願ってやまない。