不思議不可思議

風に吹かれて西東

トイレの花子さん

小学校低学年で関東の内陸部に引っ越した。
海が無い町の夏は恐ろしい程暑く、冬は信じられないくらい寒い。

関東の気候にも大分慣れた頃、具体的には小学5年生の冬である。
僕は南棟4階にある女子トイレの前に立っていた。

トイレの入り口で

『花子さん花子さん出ておいで』

と3回唱えてその場で一回転すると、一番奥の開かずの個室から花子さんが出て来ると言う噂を聞いたからだ。

本当に花子さんが出て来るのか?
その頃はゲゲゲの鬼太郎の影響で、妖怪を見たいと言う好奇心が抑え切れなくなっていた。

放課後、4階に誰も居ないことを確認し、トイレの中に入る。

「花子さん花子さん出ておいで
花子さん花子さん出ておいで
花子さん花子さん出ておいで」

唱えて回った瞬間。

ガチャン、バターーーーン

物凄い音がトイレに鳴り響いた。
思わずトイレを飛び出し、一目散に階段を走り降りて南棟を出た。
後ろを振り返ってみたが、誰も居ない。
暫く辺りで様子を伺ってみるも、誰も出て来ることは無く、扉は間もなく用務員さんに施錠されてしまった。
音を出したのは誰だったのだろう?

後日、同級生たちと花子さんの話をしたが、どのクラスの子も怖くて試したことが無いと言う。

この小学校には他にもドアごと白く塗り潰された開かずの間や、誰も居ないのに本のページを捲る音がする図書館等の七不思議があったが、残念なことに忘れてしまった。